(株)山城精機製作所 堀 信夫
NC研究会が25周年を迎えたことはご同慶にたえません。継続義務が何も無い任意団体が25年も続いたのは、何か魅力、存在価値があったに違いありません。工場見学と見学先に依頼した講演をお聞きすることが主事業ですので、これに魅力を持たせ続けてきた努力が第一の理由に上げられそうです。工作機械メーカー、関連機械メーカー、工作機械ユーザーだけでなく、工具メーカー、測定機メーカー、ロボットメーカー、研究所、公設試験場、博物館など関連技術のバラエティに富んだ見学先の候補を役員一同で探しては、事務局に折衝を御願いしてきました。
そのようなことをやり続けることが出来たのは、まず、日本のNC加工が目ざましく発展してきたことがありますが、それは別格として、事務局を鋳物機械工業試験場に御願いしていることと、見学、講習の企画を立てる役員会の構成にあると思われます。
事務局が公設試であることで見学を依頼しやすいだけでなく、多大な便宜を図って頂けています。面倒な折衝と事務局業務にご苦労を掛けてきた事務局の皆様に感謝したいと思います。
役員構成が大企業と中小企業のバランスがとれ、しかも、中小企業は当然としても、大企業も多くの方々が交代無しに続けて頂いていることが非常に珍しいと思います。一人一人は個性的なのですが、何か相性が良く、異業種で直接の仕事のおつき合いが無いことが気兼ねを無くしています。
定常的な役員会とは別に、ノミニケイションや家族ぐるみの旅行会(勿論、個別負担で)を通じて、親密さを増してきたメンバーが多いことで、遠慮無く情報交換できる雰囲気が出来ています。しかも、企業の現役として常に新しい情報の取り込みを怠らず、相互に刺激を与え合ってマンネリ防止に努めています。
少し、手前ミソの話になりましたが、もう一つ忘れてはならないことは、我々が首都圏にいることの有り難さです。首都圏で多様な見学先が豊富にあることは、地方で同じことをやろうとした時の苦労を考えてみれば分かると思います。
さて、役員を約20年させて頂いておりますと、見学会、講演会、役員会などでそれぞれいろいろな思い出があります。
初めて1泊旅行で出かけた大阪の工作機械見本市と新日本工機信太山工場の見学、10周年記念講演でロケットの糸川英夫先生、15周年記念講演で佐田登志夫先生(96年学士院賞受賞者)など日本の権威者をお呼びできたこと、工作機械メーカーでマザーマシンの多くが日本製に代わってきたこと、中小企業ユーザーで思いもよらぬ素晴らしい設備と加工品を見せて頂いた多くの事例、役員で出かけた会津の精密鋳造工場見学で、めったに見られない工程をすべて見せて頂けたこと、役員有志が奥様ご同伴で山口県の当社の工場へ見学に来て頂いたこと、鋳物機械工業試験場の創立60周年記念パーティに役員が招かれ、当時の畑知事と軽妙洒脱に[NC問答」を交わしたことなどが印象に残っています。
役員会が非常に良い雰囲気で続いていることの理由としてもう一つ書きますと、23年間会長を続けて頂いている平沢さんの、辛口発言をしながら気まずくさせないお人柄、役員の個人負担で行っていることのすべての費用を割り勘で処理する合理性がありそうです。そのため、お互いに気兼ねなく、おつき合いが長続きしているのではないかと思います。
将来の厳しさを考えると、いつまでも過去のノスタルジイにひたってはいられません。現在、通産省は、日本国内でモノ作りを続けるには、どうあるべきかをテーマにヒアリングを進めていますが、下請け中小企業の現場の厳しさを見ますと、施策が間に合うのだろうか、と懸念されます。施策を待つだけでなく、自助努力で変えるべきことを急がねばならないと思います。
端的に言って、新しい高付加価値品を開発するか、今までとは違った形でさらにコストダウンをするか、小ロット品を短納期で無理無くこなす体制を作るか、のいずれかが必要だと思います。
国内でモノ作りを続けるために、NC加工はどうなるか、あるいは、どうあるべきか、外れて恥をかくことを覚悟で、目の前のことから近未来まで少し展望してみたいと思います。
NC加工が、部品加工の中心であり続けることは間違いありませんが、前後の工程を含めて効率を高めて、生産性を上げて行かねばならないと思います。
パソコンNCが普及すると、営業、設計、生産技術、工場間の情報の伝達、交換の手順、画面イメージなどが一貫化されます。それによって、生産がコンカレント(同時並行)に行われるようになり、リードタイムが大幅に短縮されるはずです。このような動きについて行くことが必要だと思います。
まず、前工程はソフトで言えば、プログラムであり、ハードで言えば、加工素材です。プログラムはCAD/CAMでもっと効率的に作りたいものです。
CADは3次元ソリッドが主流になり、誰でも直観的に、ミス、抜け無く完成品をイメージ出来るようになり、流用、応用設計の範囲が広がり、設計も加工も生産性が高いことが標準化されます。しかし、新しい創造的な設計が独創的な人間に依存することが変わらないのは当然です。
CADやCAMのデータが企業間を通信で伝達されるようになるはずです。現在、CALSが話題になっていますが、意外に早く実現するかも知れません。その準備も意識しておくことが必要でしょう。
しかし、これに関連して、日本の商習慣(例えば、直接訪問しないと失礼という考え方)も変えて行かねば、国内のモノ作りの高コスト体質を直すことは困難でしょう。残念ながら、行政指導が無いと変わらないかも知れません。
CAMも素材のソリッドモデルを、加工機を選定し、やはりソリッドの治具に取り付け、完成品ソリッドを重ね合わせれば、材質に応じた最適な加工条件が事前に準備したデータベースから選択され、NCデータが自動的に作成されます。実体を持ったソリッドですから工具と、治具、取り付け具などとの干渉も自動的にチェックされます。作られたNCデータは必要なら、DNCファイルに蓄積され、いつでも呼び出して、加工着手出来るようになります。
加工素材は、今後も加工能率が上がるといえども、更に「ニアネットシェイプ」にして行く必要があると思います。そのためには、多品種少量生産では、鋳造業者とのタイアップが必要だと思います。ニアネットシェイプ高度化による生産性向上のメリットは鋳造業者と折半することを考えねばならないと思います。鋳造業者も、国内生産を続けられるように工場環境を整備して、人材を採用できるように、また、新しい技術(例えば、鋳張りの無い、形状、寸法精度の良い鋳物作りなど)、設備を開発、投資出来るように利益を分配しなければなりません。機械加工業者だけがメリットを独占する身勝手では、角をためて牛を殺してしまうことになります。
ニアネットシェイプにすることで、ワンチャックで全加工できる部品設計、治具設計が出来るようになり、治具への取り付け部の剛性を確保するために形状、寸法の精度向上、標準化ができれば治具を共通化し、パーマネントセット出来ます。素材の取り付け、取り外しは将来も人間の技能、熟練に依存するのが素直だと思います。これが、今後、精度を確保する手段になりそうです。
第2にNC加工をCAD/CAMと本質的に連動させるためには、WEDMを除いて、工具のプリセット精度を高めて、あるいは機上で工具を測定して補正をかけて、試し削り無しで加工着手できることが必要です。これによって、工具をパーマネントセットし、寿命管理だけすれば良いことになります。多品種少量生産ではこれが不可欠だと思います。これも、工具の管理を外段取り化し、精度を確保する手段となりそうです。
すべてを機械に依存するようなモノ作りは、あるレベルまでの教育期間、修得期間を短縮できる一方、それから上に上げることが困難です。
人間が主役で多能化、フレキシブル化、機敏さを進めて、より上を目指して、特色を出して行きたいものです。そうしないと、早かれ遅かれ、アセアンに追い付かれます。現実に、かつて日本以外には出来ない、と豪語していた高精度VTR部品が数年後には、アセアンで作られるようになってしまった例があります。
第3に、NC機に絶え間無く素材とプログラムを供給するためのスケジュール、生産管理が高価な設備の稼働率を高めるために重要です。パソコンLANで合理化されることも多いはずです。NC機は、無理無く、ムラ無く、無駄なく、組立工程にジャストインタイムに完成部品を供給することが役割です。
第4に、後工程の計測の存在価値です。NC加工では検査は不要だと言われることがあります。確かに、1個目が良品であれば、工具の寿命内の加工品は良品のはずですから検査は不要です。しかし、1個目が良品であることを確かめるには、ひとつは、実際に測定してみること、もう一つは、前述のように工具のプリセット精度を高めて、加工寸法との相関を事前に測定しておくことです。加工順に並べて置いて、数個毎に抜き取り測定して、OKならば、それまでの加工品は合格としながら、公差を越えそうになったら、工具寸法を補正するか、工具を交換することで工具の寿命を管理できます。このようなデータを蓄積するためにも、加工機の精度の管理のためにも、加工物の計測は必要でしょう。
しかし、加工寸法は、代表寸法だけを測定すれば良いようにすべきで、加工機で工具の代わりにセンサーを取り付け、測定機として、温度の影響を補正して、機上で測りたいものです。それで品質が確保されるように、取り付け歪を生じないような部品、治具設計をしたいものです。
工業部品は、再現性が必要なので「測れないことは作れない」あるいは逆に、「測れれば作れる」と言われます。加工機の精度は悪くとも(程度にもよりますが)、高精度の測定機で測りながら、高度な技能者が調整しながら使えば、測定機の精度までの部品を一つづつ作れることになります。機械の自動加工だけ(形式知)では出来ないことを、職人芸(暗黙知)でできる領域があります。
本来は、このような技能に依存するモノ作りがマネをされ難い、特色を持った手段になるはずです。
したがって、加工を高精度化(高付加価値化)するには、高精度な測定機が必要になります。しかし、そのような測定機は高価で、一企業では稼働率が低いですので、簡単には購入できません。したがって、そのようなニーズを持つ企業が共同で資金を負担してリース(数年間)し、その設置、使用教育、管理を公設試に依頼する仕組みが考えられるのではないかと思われます。
測定機に限らず、高度な加工設備も同じように設備し、例えば、出資比率に応じて使用時間切符を発行するような仕組みは考えられないでしょうか。勿論、1日24時間、1週間7日稼働させるのが当然です。SIBPでは検討していただきたいと思います。
以上、思いつくままに、いろいろなことを書いてみましたが、独りよがりや重要なことが抜けている可能性が多いと思います。それらを補いながら、今後の対応を考えてゆきたいと思います。
今後も、時代の変化をとらえて、NC研究会の名前にふさわしい企画を立ててゆきたいと思います。会員の皆様からも、見学先、講演会の講師の提案、その他のアイデアを事務局までよろしく御願いいたします。
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